燃料費や人件費の高騰により、ゴミの運搬・処理にかかるコストは、自治体や事業者にとってますます大きな負担となっています。加えて、環境負荷や埋め立て地の残余年数など、ゴミ処理にまつわる課題は多岐にわたります。こうした問題の解決に向けて、株式会社JOYCLEは、小型アップサイクルプラントによる新たなゴミ処理サービスを提案しています。代表取締役社長 CEO の小柳裕太郎さんに、事業の詳細と今後の展望について伺いました。

ゴミを焼却せずに200℃から1000℃で熱分解

JOYCLEが提供するのは、小型アップサイクルプラント「JOYCLE BOX(ジョイクルボックス)」と、処理状況などを可視化するダッシュボード「JOYCLE BOARD(ジョイクルボード)」を組み合わせたシステムです。

JOYCLE BOXは、自動車でけん引が可能で、電気で稼働します。内部は酸素濃度が低く、焼却せずに200から1000℃で熱分解を行います。液体金属を除けば、多くのゴミを細かく分別せずに処理でき、煙や臭い、騒音も発生しません。処理後に得られるバイオ炭やセラミック灰は、建材や水質浄化剤として再資源化され、地場産業で循環させる取り組みも進めています。さらに、熱分解時に発生する熱の再利用に向けた技術開発にも注力しています。

社内には、新規事業や環境分野のグローバルビジネスに精通した小柳さんを中心に、ハード・ソフトの設計に対応できる技術者が揃っています。通信、商社、バイオ、製薬、大学研究者など、多様な人材が参画しています。JOYCLE BOXの開発では、F1エンジンの温度制御技術を持つ企業とも連携し、高精度で信頼性の高い装置を実現しました。

出元処理による安全性・コスト面の利点と活用可能性

現在、引き合いが多いのは、工場や病院など日常的に大量のゴミを排出する施設です。これらの現場では、排出されたゴミをその場で処理することで、産業廃棄物としての扱いを回避でき、処理コスト削減と安全性の向上が期待されます。特に感染性医療廃棄物のように処理費用が高いゴミに対しては、JOYCLE BOXの導入により大幅なコスト削減が可能です。

また、これまで処理施設への輸送が困難だった離島や山間部、焼却施設を持たない自治体にとっても、現地処理が可能なJOYCLE BOXは有効な選択肢です。環境への負荷を低減するだけでなく、処理の安定性と地域の自立性を高める仕組みとして注目されています。

小柳さんは、素材を再利用する質の高い「マテリアルリサイクル」はできる限り進めたほうがいいと考えています。その一方で、遠方まで運搬するよりも、排出地で処理したほうがコストや安全面で優れる場合があるといいます。まずは国内外で処理に困っている現場の課題を解決し、将来的にはJOYCLE BOXを活用したマテリアルリサイクルの実現も視野に入れています。

可視化とデジタル連携で循環型社会に貢献

JOYCLE BOXと連動するデータ管理ツール「JOYCLE BOARD」は、装置の稼働状況をリアルタイムで可視化し、メンテナンス時期や処理量、処理結果などを蓄積・分析できます。これにより、企業は廃棄物処理による環境負荷の削減効果を数値で把握でき、カーボンクレジットやCSR・ESGへの対応にも活用可能です。効果測定は九州大学と連携して実施しています。

今後は、処理能力が向上したJOYCLE BOXを車両に搭載し、各施設を巡回して処理する「JOYCLE SHARE(ジョイクルシェア)」の展開も予定しています。ゴミが一定量に達すると重量センサーが反応し、自動で最適ルートに配車される仕組みです。排出元で即時処理が可能なため、産業廃棄物としての処理が不要になり、物流や環境分野からも高い関心を集めています。

また現在、人手不足やコスト増で事業継続が困難となっている廃棄物処理業者やゴミ収集事業者が増えています。そうした事業者に対しては、JOYCLE BOXを活用したアップサイクルプラントの運用やメンテナンスへの業態転換を提案し、協業による新たなビジネスモデルの構築を進めています。

生成AIを活用して自動制御も可能に

現在、JOYCLE BOXの処理効率をさらに上げるべく、さまざまなデータを分析し、生成AIを活用していくことを視野に入れています。カメラや重量、温度、酸素濃度センサーなどでモニタリングして自動制御が可能になります。

また、災害時における活用にも注目が集まっています。災害現場に太陽光パネルとStarlink(スターリンク)を設置し、JOYCLE BOXを稼働させることで、被災地の災害ゴミ処理状況を遠隔地から把握することができます。

ゴミ処理は、いまや世界的な課題です。たとえばタイのプーケットでは、ゴミの焼却が限界を超えて、埋め立て地に積み上がり、環境や衛生面で深刻な影響を及ぼしています。発展途上国ではいまだに埋め立て処理に依存しており、運搬や処分地確保の課題も顕在化しています。こうした地域でも、JOYCLE BOXの活用が有効な手段になります。

小柳さんは、将来の展望として、次のようなビジョンを描いています。世界中のゴミ収集車が、走行中にゴミを処理し、その熱で発電した電力を自らの動力として活用する未来です。こうした仕組みが実現すれば、収集車そのものが移動型の循環型アップサイクルプラントとなります。JOYCLEは、そうした持続可能な社会インフラの実現を目指しています。

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