留学に特化した奨学金プラットフォーム「スカラシップパートナーズ」を提供している株式会社RyuLog。学生にとって高額な留学費用の問題と企業の新卒採用が難しいという課題を同時に解決する画期的な取り組みとして注目を集めています。スカラシップパートナーズの詳細や将来の展望について、同社の代表取締役CEOである平良美奈子さんに伺いました。
「学生からお金をもらわない、学生にお金をどう届けるか」
東京で起業して、まずは人材紹介業を試みますが、留学経験者の希望する就職先とRyuLogが持っているスタートアップやベンチャー企業とのネットワークではマッチングがうまくいきませんでした。そんな中、参考にしたのが、徳島県の「神山まるごと高等専門学校」の取り組みです。
神山まるごと高専では、民間企業から出資を募り、その基金の運用益を奨学金として学生に提供していました。このモデルにヒントを得て、平良さんは「企業の出資によって奨学金を提供し、学生と企業が自然に出会える仕組み」を思いつきます。
スカラシップパートナーズの着想そのものは、平良さんが沖縄にいた頃からすでにあったといいます。特に「学生からお金を取らず、学生にどうお金を届けるか」という視点は、当初から大切にしてきた価値観でした。スカラシップパートナーズは、CSRと投資の中間に位置するような仕組みを目指しており、採用にもつながる「トビタテ!留学JAPAN」のようなサービスを志向しています。
奨学金が企業と学生を結ぶ「エントリーの代替手段」に
企業が出資することで、学生への認知度が高まり、奨学金に応募してきた学生との接点が生まれます。一般的な求人のエントリーとは異なり、奨学金に応募する学生は選考の過程で自ら辞退することが少なく、企業と学生が互いをより深く理解する機会にもなります。最終的に奨学生に選ばれなかった場合でも、その後の採用につながるケースもあります。
これまで留学費用は学生自身が負担するのが一般的でしたが、それを企業が支援するというのが新しい取り組みです。企業が本来、学生のレジュメを集めるために就職ポータルサイトへ支払っていた掲載費を、奨学金という形で学生に直接還元しています。
優秀な人材になかなかリーチできていない企業にとって、奨学金を通じた接点づくりは非常に有効です。奨学金という切り口を活用することで、対象を明確に絞って応募を促すことができるため、採用のミスマッチを防ぐことにもつながります。
学生はスカラシップパートナーズに登録することで、複数の奨学金に応募できます。留学前には奨学金や留学先の情報を効率よく収集でき、留学中はインターンシップ先の情報を受け取ることも可能です。さらに、留学後に留学の報告をサイトに公開することでそれを見た企業からダイレクトリクルーティングにつながるという利点があります。
留学してみたものの、結局何を得たのかよくわからないと感じてしまうケースもありますが、スカラシップパートナーズを活用することで、留学経験を客観的に評価できる機会が得られます。2025年1月の本格始動以降、すでに500人以上の学生が登録しています。
高専生向けの新プロジェクト「KOSENJIN scholarship partners」
今後の展開について、平良さんは「子どもたちが無謀なことを堂々と言えるような社会をつくりたい」と考えています。「イーロン・マスクになりたい」「外国に行ってみたい」と夢を語る子どもたちをもっと増やし、応援できる社会を目指す。そのために必要な情報や資金は、大人たちが責任を持って用意すべきだといいます。
こうした思いのもと、一般財団法人高専人会と連携し、高専生を対象とした留学奨学金プログラム「KOSENJIN scholarship partners ― 高専生留学プロジェクト」を立ち上げました。高専生は世界の同世代と比べても非常に高い技術力を持っており、海外での経験を通じてさらに自信を深めることで、研究やキャリアへの挑戦に弾みをつけることができます。
平良さんは、「日本人がもっと海外に目を向け、留学を通じて日本の良さを再発見する経験を広めていきたい」としています。そうした経験が、将来的には日本の国際競争力の強化にもつながると考えています。留学が当たり前のこととして社会に浸透し、学生個人だけでなく社会全体で支援する仕組みを整えることこそが、スカラシップパートナーズの使命だと語っています。
留学に特化した奨学金プラットフォームは、留学を目指す学生、将来の人材を求める企業、そして社会全体にとってもメリットがあります。まさに三方良しの新しい仕組みとして、今後の広がりが期待されています。