学生時代の留学は、グローバルな視野を育む貴重な機会です。しかし、円安や物価高騰により留学のハードルは高まっています。さらにせっかくの留学経験も学業や就職に活かしきれないことがあります。こうした課題の解決を目指し、株式会社RyuLogは留学特化型の奨学金プラットフォーム「スカラシップパートナーズ」を展開しています。代表取締役CEO・平良美奈子さんに、起業に至るまでの背景を伺いました。

「トビタテ!留学JAPAN」で実感した日本の立ち位置

沖縄生まれ・沖縄育ちの平良さんは、小学生の頃から環境問題に関心を持ち、沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)生物資源工学科へ進学しました。在学中は、部活動や学生会、カナダでの国際学会参加などさまざまな経験を重ねました。

専攻科2年の夏休みには、文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」を活用してシンガポールへ留学しました。沖縄高専の海外インターンシップ先を開拓する取り組みの一環として、約100名の担当者と面会する機会も得ています。現地で、アジアの拠点として急成長するシンガポールの姿を目の当たりにします。

そこで、平良さんは日本の若者が海外を知らずにいることが国の国際競争力低下に直結するという危機感を抱くようになります。とりわけ、沖縄の学生が海外に出るきっかけを持ちにくいことに強い問題意識を持ちました。

1000人規模のイベントを実現、起業へつながる一歩に

高専卒業後、東京の人材系ベンチャーへの内定を辞退し、平良さんが選んだのは「沖縄で留学する若者を増やす」という道でした。まずは、「自分にもできるかもしれない」と思えるような実体験を届けるため、留学イベントの企画・開催に挑戦しました。

準備期間を1年確保し、2017年3月には沖縄コンベンションセンターで約1000人を動員する留学イベントを開催しました。資金面ではクラウドファンディングや企業スポンサーに加え、恩師や家族からの借入にも頼りましたが、平良さんの行動力が支援を引き寄せ、イベントは成功を収めました。

参加者の反応を見て、「留学に関わる仕事を続けたい」という思いはより強くなりました。イベントで築いた学生ネットワークを活かし、イベントを共に企画した女性2人とともに2017年7月に最初の会社を設立しました。

「沖縄で起業して沖縄を救いたい」

平良さんが沖縄での起業を選んだ背景には、地域格差や学力格差への強い問題意識がありました。「沖縄で起業して沖縄を救いたい」という使命感が、その原動力となったのです。

奨学金の情報は存在していても、「自分には無理だ」と最初から諦めてしまう学生は少なくありません。経済的事情や自己肯定感の低さが、挑戦の機会を奪っている現状を変えるには、身近な成功例や一歩を踏み出すきっかけが必要だと考えていました。

だからこそ、「先輩がトビタテ!に合格した」「奨学金で海外に行けた」といった身近な成功例に触れることが、自分も挑戦できるかもしれないと感じるきっかけになります。平良さんは、海外留学への最初の一歩を踏み出せる「体感の場」をつくりたいと考えるようになりました。

事業の模索と、転機となった出会い

創業当初はカスタムマーケティングリサーチなどに取り組みました。世界中に留学中の学生をリサーチャーとして活用し、Z世代のグローバル意識調査を行う点が特徴でした。しかし、地元企業の予算不足や新型コロナウイルスの影響で留学の中止や延期が相次ぎ、事業の継続はより厳しい状況となりました。

そんな中、沖縄を訪れていたさくらインターネットの田中邦裕さん、マイネットの上原仁さんとの出会いが転機となります。以前から平良さんは、「沖縄の学生の底上げ」と「留学を促す仕組み」の両立を目指していましたが、上原さんからは「沖縄のことと留学のこと、どちらが本当にやりたいのか」と問いかけられます。そして、「留学をビジネスにしたいなら、留学を希望する学生が多い東京で起業すべきだ」とのアドバイスを受けました。「地元に恩返しをしたいなら、まずは外で力をつけてから戻らなければならない」という言葉に背中を押されます。

その後、田中さん、上原さん、そして「トビタテ!留学JAPAN」のプロジェクトオフィサーだった新村和大さんから出資を受け、平良さんは2021年5月に東京で新たに株式会社RyuLogを立ち上げました。

(後編につづく)

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