ネット検索によって瞬時に情報を得られる時代ですが、情報量が膨大なあまり、本当に必要な情報を見つけ出すのは容易ではありません。そうした検索のジレンマを解消するために、AVA Intelligence株式会社はAIを活用した旅行プラン作成アプリ「AVA Travel」を提供しています。同社の代表取締役である宮崎祐一さんに、サービスの詳細と今後の展望について伺いました。
目的地が決まっているユーザー層をターゲットに
2022年、AVA IntelligenceはChatGPTを活用し、事業のさらなる拡充に向けて動き始めました。LINE上で展開したAIコンシェルジュ事業の検証では、8割以上のユーザーが旅行の目的地を決めたうえでAIに相談していることが明らかになりました。
こうした傾向を踏まえ、「AVA Travel」では「行きたい場所は決まっているが、他はまだ決めていない」といったユーザー層を主なターゲットとしています。ユーザーの好みに基づいて、宿泊施設やレストラン、周辺の観光スポットなどをどのように組み合わせるかを、AIが提案します。各種予約サイトとも連携しているため、ユーザーは好みのサービスを選んでそのまま予約を行うことができます。
また、AIを活用した旅行プラン作成サービスを自治体にも提供しています。長崎県の公式観光情報サイト「ながさき旅ネット」では、「AI旅行プラン」という機能を実装しており、県内の観光情報をもとに、AIがわずか数秒で旅行プランを自動生成する仕組みとなっています。
AIがユーザーを理解してその人専用のモデルコースを作成
一般的な観光公式サイトで検索すると、数100件から多い場合で1000〜2000件もの観光スポットが表示されます。これらの中からユーザーが一つずつ選んでいくのは、膨大な時間と手間がかかります。また、多くのWebサイトでは観光のモデルコースを提示していますが、ユーザーはその中からどれか一つを選ぶ必要があり、いったん選んだ後は変更がしにくいという難点もあります。
「AVA Travel」は、こうした課題をAIの活用によって解決しています。面倒な作業はAIに任せ、まず「このプランでいかがですか」という提案を自動で提示し、それをベースにユーザーが自由に調整することで、格段に短時間で効率的に旅行計画を立てることができます。AIがユーザーの好みや傾向を理解し、その人専用のモデルコースを瞬時に作成できる点が大きな特長です。
ネットにない情報も取り込んだデータベースで差別化
今後の展開として、旅行会社へのAI旅行プラン作成サービスの導入も見込まれています。旅行会社では、店頭での提案や企画、見積もりの作成などに多くの時間と労力を要しています。将来さらなる人手不足が懸念される中で、同社のサービスが注目を集めています。
生成AIは、ネット上のさまざまな情報を検索して取得することができますが、あくまでインターネット上に公開されている情報に限られます。検索では見つかりにくい、地元の人しか知らないようなマニアックな店やスポットは拾いきれないのが現状です。そのような独自性の高い情報を収集し、オリジナルのデータベースとして構築することで、より精度の高い旅行プランを提案できるかが鍵になります。また、旅行計画に特化したUIやUXについても、自社で設計・開発する必要があると考えています。
近年では、個人が生成AIを使って旅行プランを作成し、それをSNSや動画で発信するケースも増えています。そうした個人ユーザーや他社サービスとの差別化にも力を入れ、競争力の強化を図っています。
ユーザーに「こんなところがあるんだ!」と感動してもらう
今後の計画としては、「AVA Travel」の機能をさらに充実させ、より快適に旅行プランを作成できるサービスを目指しています。宮崎さんは、「旅行先を自分で調べて見つける楽しさも大切です。誰もがすべてをAIに任せたいわけではなく、そのバランスが重要だと考えています」と話します。そうした考えから、ユーザーが「こんなところがあるんだ!」と感動できるような発見の要素を高めていく方針です。
社名にもある「AVA」は「アバター」に由来しており、ユーザーの好みや性格を理解したAIが、自分の代わりに情報収集や選択を行う“知的な存在”を意味しています。単に情報を提示するだけでなく、ユーザー一人ひとりに寄り添った提案を実現することが目標です。
「製品の精度をさらに高めることで、AIのレコメンドから本当に行きたい場所を選べるようになります。『AVA Travel』で旅の計画を立てる方が、圧倒的に面白く、より良い体験につながるということを、より多くの人に実感していただきたいと考えています」と宮崎さんは語ります。
旅行に特化した同社のAIエージェントは、ユーザー満足の向上はもちろん、旅行業界の人手不足や自治体の観光施策といった社会的な課題の解決にも貢献していくことが期待されています。